収録時間:172分
レンタル開始日:2002-08-23

Story
カンヌ映画祭でパルムドールを受賞し、日本でも大ヒットを記録した壮大なスケールの感動作がDVD化。2人の京劇俳優の50年に及ぶ愛憎劇を描く。レスリー・チャンの人気を不動のものとし、新進女優コン・リーをスターダ(詳細こちら


「さらばわが愛 覇王別姫」は前に見たことがあります。チェン・カイコー監督の名作で1993年に上映今はなきレスリー・チャンの好演が印象に残りました。また、レスリー・チャンは京劇の女形をやったのですが、それがまた美しいこと。京劇では女性の役柄のことをだんといい、女形のことを男旦というそうです。昔は京劇の舞台に女性が立つことが許されず、女性の役も基本的に男性が演じました。(例外もあったようですが)

次第に、女性が京劇の舞台に立つことが許され、今では女性の京劇俳優が増え、男旦の方が珍しくなったほど。


有名な男旦といえば、梅蘭芳バイランホウでしょうか。のちにチェン・カイコー監督が梅蘭芳の生涯を映画化しました。「さらばわが愛 覇王別姫」の主人公のモデルも梅蘭芳と言われております。チェン・カイコー監督にとって梅蘭芳は特別な存在なのかなって思いました。

ネタバレは出来ないけれど、今日はこの映画で特に興味深く思った事を書いてみます。


それはこの映画における日本軍、国民党軍、共産党人民解放軍、紅衛兵こうえいへいえがき方です。

京劇きょうげきに対する態度を通して、それぞれのグループの性格をうまく描き分けています。


  • 日本軍は中国を侵略しんりゃくし、罪の無い中国人をピストルで銃殺じゅうさつするような悪い連中だと映画で描かれている一方で、京劇を観る態度は礼儀れいぎ正しい。礼儀正しさだけでなく、敵国の文化でも良いものは良いとすなおに認める度量どりょうが日本軍にあるとも描かれていました。


  • のちにチェン・カイコー監督が撮った「花の生涯 梅蘭芳」でも、京劇に理解を示す日本軍人が登場します。その日本軍人を安藤政信さんが演じられましたっけ。

  • 国民党軍は京劇を観る態度がなっていなくて乱暴だと描かれていました。現に国民党軍は台湾たいわんでも悪いことをして、「犬(日本人)は去りて、豚(国民党)来たる」といわれてしまうほどです。(※1)


  • 人民解放軍は比較的礼儀正しく京劇を見ている様子が映画に描かれていました。人民解放軍は軍規ぐんきも厳しくて有名だそうです。人民解放軍が行進する映像を見たことがあるけれど、兵隊達はキリッとしています。あと、中国の伝統文化に理解を示していた事も何となく理解できます。


けれど文化大革命のときは伝統的な京劇は演じられず、現代劇しか演じることが出来なかったそうです。これは毛沢東モウタクトウつま江青コウセイが京劇を毛嫌けぎいしたことも理由のひとつだとか。紅衛兵が京劇俳優きょうげきはいゆう弾圧だんあつするシーンもこの映画に出てきます。

※1 犬はうるさいけれど番犬として役に立つこともある。けれどブタは食っちゃ寝、食っちゃ寝で迷惑だと言う意味で日本軍と国民党軍を比較ひかくし、皮肉ひにくっている。