え〜と、いま僕はイスラエルとパレスチナの歴史の話をしているのですが、今日はお話の舞台はヨーロッパです。ディアスポラでヨーロッパに離散したユダヤ人たちがどんなに苦労したかを語るころで、のちのイスラエル建国につながっていくのだということをお話ししたくて、あえてヨーロッパのお話をしたいと思います。


1 迫害されるユダヤ人たち
 みなさまは『ベニスの商人』という作品をご存知でしょうか?「ぺ〇スの商人」じゃないですよw「ベニス」です。この作品はシェイクスピアの作品で、映画や劇にもなりました。この作品に強欲なユダヤ人の金貸しが登場します。ユダヤ人は金に汚く、欲が深いというイメージが中世のヨーロッパ人にあったようです。

ヴェニスの商人 (新潮文庫)
シェイクスピア
新潮社
1967-11-01



当時のユダヤ人は高利貸しが多かったのです。といってもユダヤ人たちが好きで高利貸しになったわけではなく、ユダヤ人がヨーロッパ社会で差別されていて、ろくに仕事にくことができなかったからです。

11世紀〜12世紀ころのヨーロッパでは商品経済が発展していたのですが、利子をとることを聖書が禁じていたという理由で、キリスト教徒には金もうけや利子をいやがる傾向があったようです。だからキリスト教徒であるヨーロッパ人たちが高利貸しという職業を敬遠けいえんしたのでしょう。ところがユダヤ教には特に利子を禁じているわけではありませんでした。当時のヨーロッパでは高利貸しは今風にいえばニッチ産業みたいたもので、高利貸しをはじめるユダヤ人たちがたくさんいたのでしょう。

高利貸しで富んでいくユダヤ人たちに対するひがみ、利子を返せない人たちのウラミから、ヨーロッパ人によるユダヤ人への偏見へんけんはますます強くなりました。

ユダヤ人の経営する店が暴徒に略奪りゃくだつにあったり、封建諸侯ほうけんしょこう(※1)にユダヤ人という理由で高額な税金をとられたりしました。

また、疫病えきびょうがはやったり、子どもが行方不明になるとすぐにユダヤ人のせいにされ、拷問ごうもんにかけられたり殺されたりしたといいます。ユダヤ人の差別と虐殺ぎゃくさつというとナチスのホロコーストを連想してしまいますが、中世の昔からそのようなことがあったのですね。



2 いつも差別ばかりされていたわけではない。

 ユダヤ人たちはヨーロッパでは差別ばかりされてきましたが、常に差別されていたわけではないのです。封建諸侯に認められ宮廷でお金の管理を任されたユダヤ人も少なからずいたようです。

19世紀後半、ドイツの近代化に力を注いだビスマルクは、ユダヤ人に財政管理をまかせました。普仏ふふつ戦争(1870年)でドイツはフランスに勝ち、フランスに対する50億フランの賠償金額算定ばいしょうきんがくさんていも任せたといいます。

差別や偏見をバネに得意なことを生かして頑張がんばった人たちはどの時代にもいたのですね。


3 ロスチャイルド家の台頭
 ユダヤ人で成功した一族といえばドイツのロスチャイルド家でしょう。ロスチャイルドの元祖はマイヤー・ロスチャイルドといい、しがないユダヤ人古物商でした。彼は有力貴族のコネもあって、マイヤー・ロスチャイルド商会を立ち上げることができました。このとき商標としてかかげたのが、ロスチャイルド家に代々伝わる家紋かもん「赤いたて」です。

当時、ユダヤ人には市民権がなく、姓をつけることさえ許されなかったので、家紋で自分をアピールするしかなかったのです。

やがてロスチャイルド家は、どんどん大きくなり、ヨーロッパ金融界はロスチャイルド家なしには動かないほどにもなりました。ナポレオンの戦争のときもロスチャイルド家は大もうけをしたといいますし、1904年にはじまった日露戦争の軍資金の70%がロスチャイルドの息のかかったユダヤ人の投資会社から調達されたといいます。

ところでロスチャイルド家が日本にこれだけの融資をしたのはなぜでしょう?

一説によれば、当時のロシアはポグラム(※2)とよばれるユダヤ人迫害がひどく、それに怒ったロスチャイルド家をはじめとするユダヤ人たちによる仕返しともいわれております。

ちなみに、第一世界大戦中にバルフォア宣言というユダヤ側とイギリスとのパレスチナをめぐる密約が行われるのですが、このときかかわったのがロスチャイルド家です。第一世界大戦の戦費をイギリスがロスチャイルド家から借りていたのです。弱みを握られたイギリスはロスチャイルド家に対して、パレスチナについてユダヤ人のことを考えてあげましょうと言い出したのです。その辺のお話は後ほど。

※1 主君である君主の権威の範囲内で一定の領域を支配することを許された臣下である貴族のこと
※2 僕が説明するよりもこちらのサイトをご覧いただいたほうがご理解が深まるかと思われます

                   http://matome.naver.jp/odai/2138007344688035201


※ 参考文献