米軍は、空襲をする前に予告ビラを上空からばらまいたといいます。目的は日本国民の戦意喪失です。空襲に依る大量虐殺はまさに国際法違反ですが、米軍はおかまいなし。米軍からすれば「予告をしてやったのに逃げないほうが悪い」という言い分なのでしょう。ひどい話です。

では米軍の人たちには良心の呵責がないのでしょうか。ある軍人は「日本国民を人間として扱われる権利を失ったと確信するに至ったのは、日本軍の(捕虜虐待という)残虐行為のせい」「戦争が短縮されて何千というアメリカ人の生命が救われるのだから日本の年をできるだけ早急に焼夷弾で徹底破壊するべきである」など。つまり日本軍は捕虜虐待(あとは真珠湾攻撃)などひどいことをしたのだから空襲にあっても因果応報だ、あるいは米国民を守るためには仕方がないという認識があったようです。これも、ひどい話です。

で、終戦までにまかれた枚数は458万4000枚にもおよぶといいます。「あなたの街を攻撃します」などと書かれていたら国民はビビるでしょう。当然、日本政府は「ビラの内容を信じるな、逃げるな」と訴えました。

昭和20年の『朝日新聞』にはこのように書かれてました。

「今度敵機が撒布した宣伝ビラの内容は荒唐無稽のもので、これによって一億国民の旺盛な繊維に何等かの影響も及ぼすものではない。しかし、敵は手をかえ品を変え、一億国民の戦意、団結を破壊を計るものと予測する。’(略)国民はゆめにも敵の謀略宣伝に乗ぜられてはならない」(『朝日新聞』昭和20年2月18日)

実際、憲兵隊や隣組の組長が「ビラをひろうな」、持っているものは提出しろ」と厳しく町内を見回ったといいます。しかし、大量にまかれたものを回収するのは大変な作業です。こうした空襲の情報は町から街へとつたわってしまうのです。

昭和20年3月の東京大空襲で10万人が死亡しました。それからすぐに内務省が決定したのは、拾った空襲予告ビラを警察に届けないものを最大三か月の懲役刑に処するという内務省令(昭和20年3月10日発令)でした。大空襲の惨劇を目の当たりにして、まず決めたのが空襲予告ビラの徹底回収と国民の口封じでした。消火設備は一向に整備されず、疎開政策もなかなか進まないなかで、こういう対処は非常に迅速だったのです。

僕は空襲をするアメリカもひどいけれど、逃げることを認めなかった日本政府も問題だなって思いました。当時の日本政府がビラなんてただの脅しだとマジで思っていたのなら話は分かりますが、アメリカが空襲をすることを日本政府はきちんと予測していたのですね。それだけに質が悪い。