※ この記事は「歴史秘話ヒストリア」を参考にして書きました。

戦国の世を大きく変えた鉄砲。なにしろ鉄の鎧さえも撃ち抜くのですから。この鉄砲が日本に初めて伝わったのが1543年(天文12)年のこと。この年、種子島に外国の船が漂流してきたのです。その船にポルトガル人が乗船していたのです。

ポルトガル人が持っていたのが鉄砲でした。当時の種子島を治めた領主が種子島時堯でした。時堯は試しに鉄砲を撃ってみると、その威力に驚いたといいます。時堯はポルトガルの証人から2丁の鉄砲を買いました。現在の価値で数千万円ものお金を支払ったともいわれております。時堯は鉄砲の国産化を考えました。島で一番の鍛冶屋に鉄砲を研究させ、作らせようとしましたが、鍛冶屋は制作に行き詰ってしまいます。銃身の後ろをふさぐネジです。当時の日本にはネジというものがありません。鍛冶屋は困り果てました。それが、翌年1544年(天文13年)、ポルトガル人が再びやってきたのです。運がよかったですね。そのポルトガル人にネジのことをきいたそうです。そして、鉄砲は完成。

鉄砲の国産化は種子島だからこそできたといいます。種子島は砂鉄がとれるところでした。だからこそ、中世にも鍛冶屋がいっぱいいて、そこに鉄砲が伝来したら、すぐにそのコピー品をつくることができたといいます。また、当時の領主の時堯が16〜17歳の若く、好奇心も盛んで、こんな便利なものを多くの人に使ってもらいたいという気持ちがあったのも大きい。もし、年取った領主だったら、高い金を払ったものを自分のものとして秘蔵したことでしょう。

また、のちに本能寺の変の舞台でもある本能寺の末寺が種子島にあり、また大坂の堺にも本能寺の末寺があり、堺に刀鍛冶屋がいたので、その刀鍛冶屋を種子島に勉強にいかせたという記録もあるそうです。そうした本能寺ネットワークは京にも鉄砲をもたらしました。細川勝元は本能寺から鉄砲をもらい受けたといいます。


そうして鉄砲の生産は増大。各地に鉄砲鍛冶屋ができました。各地に鉄砲生産の工場ができたといいます。そのひとつは国友村。国友村は滋賀県にあります。国友の鉄砲はひたすら性能を追求し、命中率を追求したといいます。銃身、筒の部分が質実剛健、堅ろうであって、鉄を鍛えぬいて固く強くしてきたといいます。それがほかの火縄銃の産地と違うところだといいます。国友村で鉄砲が造られるようになったのは、この地の大名、浅井氏が意図的に鍛冶集団を集めたのがきっかけではないかといわれております。

それから、浅井家は織田信長に滅ぼされてしまいます。代わりにこの近江の地(国友村も)は信長の支配地になりました。長篠の戦の際は、この国友村産の鉄砲が大いに役立ったそうです。



ポルトガル人の記録によると当時日本には30万丁もの鉄砲があったと書かれております。これはヨーロッパ諸国の鉄砲の数全部を上回るのです。まさに日本は世界一の鉄砲国家となったのです。

時は移って豊臣秀吉が死去し、徳川家康が大阪に攻め込みます。いわゆる大坂の陣です。その時、家康は国友村に大筒(大型の鉄砲)の大量生産を発注したといいます。ところが大誤算。当時の国友村は全国に職人が散らばっており、国友村には職人がほとんどおらず大鉄砲の大量生産ができません。それで家康は鉄砲職人が村を出て他国へ行くことを禁じました。他国に行っていた職人を連れ戻し、さらにその技術を他人にみだりに教えることまで禁じました。

そうして、大筒は完成。当時の鉄砲で敵にダメージを与えられる距離は100メートル。新しく作られた大筒は弾の重さが従来の20倍、最大射程距離が2キロ以上だといわれております。家康はなんと200丁も、大筒をつくらせたといいます。

完成した大筒は家康の陣地に届けられました。届けたのは国友村の職人たち。当時は宅配便もない時代でしたからね。郵送なんてできません。届けられた大量の大筒をみた家康は職人たちの労をねぎらったといいます。そして、家康は2〜3人職人を残したといいます。大筒や鉄砲のメンテナンス、それから外国から輸入した大砲の整備を職人たちはしたといいます。そして大阪城は落城、豊臣家は滅亡。こうした技術的な革新をおこなった家康の勝利でした。

江戸時代になると国友村は幕府の御用鉄砲鍛冶とされてきました。しかし太平の世になり鉄砲のニーズはなくなり、国友は衰退していきます。そんななか国友の技術が再び注目されます。国友一貫斎。彼はすぐれた発明家でした。一貫斎は鉄砲づくりのノウハウを生かして反射望遠鏡をつくったといいます。これで月や星を観測していたといいます。さらに一貫斎には飛行機の設計図も書いていたちいます。ライト兄弟よりも半世紀も前に飛行機が日本で考えられていたのです。

人を殺す武器が、人々を幸せにする技術に応用されたのですね。すごいことです。



(反射望遠鏡)

(本能寺と鉄砲の関係)